2026年2月20日公開

AEDの使用において、やってはいけない禁忌と呼ばれる行為はあるのでしょうか。突然の心停止から命を守るAEDですが、使い方を間違えれば問題が起きる恐れもあります。中には、自分の行為が禁忌に当たるかもしれないと思い、使用を躊躇してしまう方もいるかもしれません。
本記事では、使用してもよい場合・悪い場合、使用時に配慮したい注意点など、AEDの禁忌について解説します。命を守るためにためらわずにAEDを使用できるよう、参考にしてください。

心臓マッサージを行う様子

そもそも「禁忌」とは?読み方は?

禁忌は「きんき」と読み、医学や医療の現場では「してはいけない行為」や「避けるべき対応」を指す言葉です。AEDの使用に際しても、禁忌とされるケースが存在します。

AED使用の禁忌とは

AED使用における禁忌とは、安全上や医学的な理由からAEDを使用すべきでないとされる状況のことです。具体的には、傷病者が「意識がある場合」や「呼吸している場合」「脈拍が確認できる、または血流を示す他の兆候がある場合」にAEDを使用するのは禁忌に当たります。

AEDを使用する前には、傷病者の反応があるか、普段通りの呼吸をしているかを確認しなければなりません。電気ショックを行うかどうかは、AEDが心電図から判断するため、倒れた人の「呼吸や脈拍があるか分からない場合」や「使うべきか迷う状態にある場合」には使用しましょう。

また傷病者がゆっくりと不規則にしゃくり上げるような呼吸をしている場合は、正常な呼吸ではなく、心停止の際に見られる「死戦期呼吸」の可能性があるため、AEDを使用し、心電図を解析しましょう。

禁忌には注意が必要ですが、一般的に救助者に心停止をしていない人の判断は付きにくいため、判断に迷う場合はためらわずにAEDを使用しましょう。

死戦期呼吸について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

旭化成ゾールメディカル株式会社「呼吸があるように見えて、実は危険な「死戦期呼吸」とは?必要な対応を学ぼう

AED使用時でよくある質問と適切な対応

胸を押さえる男性の様子

続いては、AEDの使用時、禁忌かどうかが分かりにくい場合や、使う際に不安や悩みを抱きやすい場合と適切な対応について回答します。

ペースメーカーが入っている人に使える?

AEDはペースメーカーを装着している人にも使用可能です。ただし、誤作動を起こす可能性がないとはいえないため、電極パッドをペースメーカーの真上に装着するのは控えてください。

ペースメーカーが埋め込んである場合、鎖骨の下に丸い膨らみ、または手術跡があるのが一般的です。ペースメーカーがあると考えられる場所の真上は避けましょう。

なお、近年では心疾患の患者は健常者よりもAED使用の可能性が高いため、左鎖骨下にペースメーカーの埋め込みを行うケースがほとんどです。そのため、実際には、除細動パッドをペースメーカーの上に貼付してしまう可能性は低いといえます。

乳児・幼児に使える?

1歳未満の乳児にもAEDの使用は可能です。ただし、AEDによっては、使用する電気ショックのエネルギーや電極パッドが異なる場合があります。乳児・幼児に対して使用する場合は、基本的に未就学児モード・未就学児用パッドを使ってください。小学生以上の子どもに対しては、成人と同じモード、同じパッドで使用できます。

電極パッドは、もともと「小児用」「成人用」に分けられていました。しかし「小児」が何歳までを指すのか分かりにくいため、現在では「未就学児用パッド・モード」「小学生〜大人用パッド・モード」へと変更されています。2種類のモード・パッドが用意されているAEDでは、乳児・幼児にAEDを使用する場合未就学児用を使用してください。

ただし、中には未就学児モード・未就学児用パッドがない機種もあります。未就学児モード・未就学児用パッドがないAEDの場合は、大人と同じモード(小学生〜大人用)で電気ショックを与えてかまいません。

旭化成ゾールメディカル株式会社「AEDを子どもに使う手順と注意点、大人に使うときとの違いとは?

妊婦さんに使える?

妊娠している女性に対してもAEDは使用可能です。妊婦に使用すると、胎児に悪影響があるのではないかと心配する人も多いようです。しかし、これまでに母体へのAED使用によって、胎児に悪い影響を及ぼしたとの報告はありません。

除細動のためAEDのパッドを使用するのは胸部であり、胎児のいる腹部の羊水内からは離れているため、大きな影響が出るとは考えにくいでしょう。また胎児の心臓のように小さな筋肉では、心室細動が起きにくいとされています。

母体が心停止になっている状態は、胎児への酸素供給が滞っていることを意味しており、放置していれば胎児も死亡してしまう可能性が高くなります。母親が心肺停止状態にある場合は、母親だけではなく子どもの命を救うためにも、AEDの使用が必要です。

けがで出血している人に使える?

けがによる出血がある場合でも、心停止状態なのであればAEDを使ってください。可能であればAEDを使う前に、出血している部位を抑えて圧迫止血を実施するのが望ましいといえます。

しかし、実際には出血場所が見つからなかったり、手が届かなかったりして、止血が難しい場合もあるでしょう。止血ができない場合は、先にAEDを使用してください。傷病者が心停止している状態においては、脳や全身に血液を送ることが優先です。

出血している傷病者を救護する場合、感染症対策として救急セットにある使い捨て手袋などを使用すると、救助者も安全に救命活動を行えます。

プールや海などで体がぬれている人に使える?

AEDは体がぬれた人に対しても使用可能です。地面がぬれている場合でも、AEDを使用できます。周囲の人が感電したりする危険性はありません。
傷病者の体がぬれている場合、電極パッドを貼る部分は、タオルなどで水分を拭き取ってください。ぬれたままでパッドを貼ると、電流が体の表面でショートしてしまい、十分に心臓まで届かない恐れがあります。AEDに付属している救急セットの中にペーパータオルが入っている場合は、傷病者の体を拭くために使用しましょう。

なお、体や地面が軽くぬれているだけなら問題ありませんが、水中でAEDの使用はできません。使うと使用者も傷病者も感電の恐れがあるため危険です。水たまりや雨の中での使用も避けるようにしてください。

湿布やニトログリセリンが貼ってある人に使える?

胸部に湿布やニトログリセリンを貼っている人にもAEDは使用可能です。ただし、貼ったままでは使えないため、湿布などの薬剤ははがしてから電極パッドを装着してください。

タオルやティッシュなどがある場合は、薬剤を軽く拭き取っておくと良いでしょう。薬剤の上にパッドを使用すると、貼ってある部分に火傷が起きたり、電気が正常に心臓に伝わらず、効果が不十分になってしまったりする恐れがあります。

胸毛が濃い人にそのまま使える?

傷病者が胸毛の濃い人であった場合でも、AEDは使用可能です。ただし、胸毛によって電極パッドが密着しない場合は、心電図を解析することができません。

AEDからエラーメッセージが出るケースでは、パッドを強く押し付ける、パッドをずらす、救急セットに入っている剃刀で除毛するなどの方法を試して肌に密着させてください。

AED使用時に配慮したいその他のこと

最後に、AEDの使用に関して配慮したいポイントや注意点などを解説します。

  • 金属製のアクセサリーに注意する
  • ブラジャーがパッドに触れないようにする
  • 胸骨圧迫と組み合わせて使用を続ける

女性へ心臓マッサージを行う様子

金属製のアクセサリーに注意する

傷病者が胸部付近に金属製のアクセサリーを付けている場合は、注意が必要です。金属に電気が通ると、電気ショックの効果が不十分になったり、火傷が起きたりするリスクがあります。

ピアスや時計など金属製のアクセサリーでも、貼付位置やパッド同士の間になければ、無理に外さなくてもかまいません。アクセサリーが簡単に外せない場合は、電極パッドを金属に触れないように貼り、通常通り電気ショックを与えてください。

ブラジャーがパッドに触れないようにする

AEDは直接肌に触れるようにパッドを付ける必要があるため、女性に使用する場合、下着をどうするかは多くの人が気にするポイントです。

ブラジャーに関しては金属ワイヤーが入っている可能性があるため、電極パッドは、ブラジャーを挟まないよう、地肌に直接貼り付けましょう。AEDには取扱説明書が付属しています。事前に操作方法を確認しておきましょう。

胸骨圧迫と組み合わせて使用を続ける

AEDは胸骨圧迫と組み合わせて使用しましょう。胸骨圧迫とは心臓マッサージとも言われ、正常に動かない心臓に代わって全身に血液を送り込む重要な救命活動です。

AEDによる電気ショック後は、すぐ胸骨圧迫を再開しましょう。再度電気ショックが必要かどうかは、2分経過するごとにAEDが判断するため、傷病者の心拍が戻らなければAEDによる電気ショックと胸骨圧迫が繰り返されます。なお、一度装着したAED は、傷病者の心拍や呼吸が回復しても、救急隊員が到着して引き継ぎを行うまで外さないでください。

人工呼吸については、感染症のリスクもあるため、できる技術と意思がある人が行うとよいでしょう。

まとめ

AEDにも使用の際、禁忌と呼ばれる行為が存在します。

しかし、ペースメーカーを付けている人や乳児・幼児、妊娠している女性に使用する場合などの不安を抱きやすい場合でも、心肺の回復は最優先事項なので、ほとんどのケースでAEDを使用できます。禁忌には注意する必要があるものの、突然の心停止から傷病者の命を守るのがAEDの目的です。判断に迷う場合は、できる限りためらわずにAEDを使用しましょう。