2024年4月19日

施設を利用する子ども達はもちろん、職員や保護者の命を守る重要な設備として、近年AEDを設置する幼稚園や保育園が増えています。

ここでは、幼稚園、保育園・保育所、こども園などの運営者のみなさまに向けて、AEDの設置義務・補助金・導入時のポイントやAEDの設置が推奨されている理由、AEDを設置しなかった場合の注意点などについて解説します。

保育園・幼稚園にAEDの設置義務はない

保育園・幼稚園にAEDの設置義務はない

保育園や幼稚園には、AEDの設置義務はありません。これらの施設に限った話ではなく、AEDを設置する法的義務はないのが現状です。

自治体によっては一部の施設に設置義務の条例がある場合もありますが、基本的にAEDの設置は任意とされています。そのため、保育園・幼稚園にAEDが設置されていなくても、直ちに問題になるようなことは原則的にないといえるでしょう。

保育園・幼稚園はAEDの設置が推奨されている

法的な設置義務はない一方で、一般財団法人日本救急医療財団の「AED の適正配置に関するガイドライン」では、保育園・幼稚園にはAEDの設置が望ましいとされています。

同ガイドラインによると、学校(幼稚園・小学校・中学校・高等学校など)管理下の児童・生徒の突然死のうち、約3割が心臓突然死です。この数字は幼稚園・保育園に限定したものではありませんが、AEDを設置していれば、万が一の事態が起きた際に命を救える可能性があります。

また、厚生労働省の「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」では、施設職員にはAEDの使用を含む救急対応の訓練や役割分担についての言及があります。さらには内閣府の「教育・保育施設等における重大事故の再発防止策に関する検討会」では、教育・保育施設で重大事故が発生した場合、事故発生当日~遅くとも翌日までに所在する市町村への報告を義務化しています。

以上のことからも、保育園や幼稚園での安全確保が非常に重要であること、そして安全確保のためのAEDの必要性がうかがえます。

AEDは1歳未満の乳児に対しても使用可能です。職員や保護者が心停止状態になることも起こり得るため、施設を利用するすべての関係者の安全を確保するために、AED設置を検討しましょう。

参照:一般財団法人日本救急医療財団「AEDの適正配置に関するガイドライン」
   こども家庭庁「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」
参考:旭化成ゾールメディカル「AEDの適正配置をご存知ですか?効果的・効率的なAED設置とは

保育園・幼稚園にAEDを設置が推奨される理由・設置しない場合の注意点

AEDの設置は、利用者や職員の安全を守るのはもちろん、施設の安定した運営のためにも重要な役割を担います。
保育園・幼稚園には、子どもの安全を守る保護責任・監督義務責任・安全配慮義務があります。また、万が一事故が起こったときは、事故の経緯や原因、対処についての説明責任が生じるでしょう。事故が発生した際に施設の安全対策が不十分だったと判断されれば、民事責任・刑事責任を問う訴訟に発展することも考えられます。
このようなリスクが懸念されることからも、多くの保育園・幼稚園がAEDの設置を進めています。

参考:旭化成ゾールメディカル「安全配慮義務の観点におけるAED設置の重要性とは?

保育園・幼稚園へAEDを導入する方法

AEDを導入するには、一般的に「レンタル」「リース」「購入」の3種類の方法があります。それぞれ特徴が異なるため、導入前に条件と併せてよく検討しましょう。



レンタル

AEDはレンタルで導入することが可能です。レンタルは、1週間や1カ月といった短期間での利用にも適しています。契約期間が長期化すると、リースや購入よりも割高になる可能性が高いため、レンタルを検討する際は期間を明確にしておきましょう。



リース

AEDをリースで導入すれば、初期費用を抑えられ、比較的安価な月額料金にてAEDを利用可能です。契約内容によっては、月額料金の中にメンテナンスや消耗品の費用が含まれていることもあります。ただし、購入と比較すると、長期契約の場合は総支払額が高くなる傾向があります。



購入

AEDを長期的に設置する予定がある場合は、購入するのもよいでしょう。購入する場合は、導入にかかる総支払額を最小限に抑えてAEDを設置できます。まとまった初期費用が発生し、消耗品の補充にも別途金額が必要にはなりますが、長期的な視点で見るとレンタルやリースよりも出費を抑えられるといえます。

保育園・幼稚園のAED設置に利用可能な補助金・助成金

保育園・幼稚園のAED設置に利用可能な補助金・助成金

保育園や幼稚園にAEDを設置する際、自治体の補助金や助成金を活用できるケースがあります。補助金を使えば、AEDを導入するコストの一部を抑えられるため、施設が所在している自治体に確認してみるとよいでしょう。ここでは、補助金制度を設けている自治体の一部を紹介します。

※本記事は、2024年3月現在の公開情報をもとに作成しています。変更の可能性がありますので、最新情報や詳細については、各自ご確認をお願いいたします。



補助金や助成金の有無や条件、金額、内容は、AEDを設置する地域によって異なります。弊社ではお答えできませんので、詳細は各自治体に直接お問い合わせください。

参考:旭化成ゾールメディカル「AED設置に対する補助金や助成金とは?申請条件や対象を解説

保育園・幼稚園にAEDを設置するときのポイント

保育園・幼稚園にAEDを設置するときのポイント

いざというときのために、AEDの設置推進と一次救命処置についての知識を身につけることがのぞましいでしょう。

保育園・幼稚園にAEDを設置する際は、以下のポイントを押さえておきましょう。

  • 5分以内の電気ショックが行える場所に設置する
  • 起こり得る事故を想定して研修・訓練を行う
  • 未就学児用パッド・モードがない場合は小学生~大人用パッド・モードを使用する

各ポイントについて解説します。



5分以内に電気ショックが行える場所に設置する

AEDは心肺停止から5分以内に電気ショックを行える場所への設置が推奨されています。距離でいえば、早足で1分以内に行ける片道150mの範囲が目安です。さらには、入口付近や普段から目に入る場所、多くの人が通る分かりやすい場所、誰でもAEDを取り出せる場所であることも重要です。

保育園・幼稚園に設置する場合も、施設の規模や構造に合わせ、緊急の際に迅速に対応できる場所を選びましょう。
適正配置に関する詳細な情報は、一般財団法人日本救急医療財団が発行する「AEDの適正配置に関するガイドライン」を参考にしてください。

参照:一般財団法人日本救急医療財団「AEDの適正配置に関するガイドライン」」
参考:旭化成ゾールメディカル「AEDの適正配置をご存知ですか?効果的・効率的なAED設置とは



起こり得る事故を想定して救命講習・訓練を行う

AEDを設置する際は、起こり得る事故を想定して救命講習・訓練を行うことも重要です。

未就学児の場合、小学生~大人と比較すると必要とする電気ショックのエネルギー量が少ないため、未就学児用の電極(除細動)パッド、未就学児用モードの使用が推奨されます。また電極(除細動)パッドの貼り方も、未就学児と小学生〜大人とは異なります。パッド同士が接触しないよう、体が小さい場合は胸と背中に電極(除細動)パッドを貼り付ける必要がありますので、取扱説明書やパッドの外装に記載されている貼り方の説明やイラストを確認しておきましょう。

未就学児の心停止は、ボールなどが胸を強打して起こる心臓振盪(しんぞうしんとう)など外因性のケースの可能性が大人と比較して高いといえます。心停止を起こしやすいシチュエーションを理解したうえで、AEDの使用方法はもちろん、適切な一次救命講習・訓練を行っておきましょう。

参考:旭化成ゾールメディカル「AEDの講習会とは?一次救命を学ぶには?



未就学児用パッド・モードがない場合は、小学生~大人用パッド・モードを使用する

すべてのAEDに未就学児用パッドや未就学児用モードが備わっているわけではありません。導入の際に、未就学児用パッドや未就学児用モードを標準装備している機種を選定するのもよいでしょう。標準で含まれていない場合は、未就学児用パッドをオプションとして追加する必要があります。

保育園や幼稚園にAEDが設置されておらず、近隣の設置施設から未就学児用パッド・未就学児用モードがないAEDを借りて使用する場合は、救命を優先してためらわずに小学生~大人用パッドを使用してください。その際は、上述のとおりパッドは重ならないよう貼り方に注意しましょう。

一部のAEDでは、「未就学児」ではなく「小児」という文言が使用されている場合がありますが、適用年齢はいずれも小学校入学前の子どもです。

AED以外の救命処置を行うことも重要です。AEDの電源を入れると必要な処置を音声やディスプレイ表示で指示してくれます。なかでも胸骨圧迫は、心停止により全身に血液を送り出すことのできない心臓にかわって血流を作り出す救命に不可欠な処置です。胸骨圧迫の深さは、小学生~大人の場合約5cmですが、未就学児の場合は、胸の厚さの1/3程度です。子どもの身体の大きさに合わせた胸骨圧迫を行いましょう。

また、AEDは設置するだけでなく導入後も日常点検や管理、必要に応じた消耗品交換などのメンテナンスを行わなければ非常時に適切な使用ができません。AEDを設置したらただちに管理者を任命し日常点検と管理を行いましょう。パッドとバッテリーなどの消耗品は使用期限があります。期限切れのパッド、使用済み・開封済みのパッドは使用できませんので、速やかに交換してください。

参考:厚生労働省「AEDを点検しましょう!」
   旭化成ゾールメディカル「AEDを使ったらどうすればよい?パッドの交換や廃棄など、AED使用後に取るべき手順と注意点を解説

まとめ

保育園や幼稚園へのAEDの設置は、子どもたち、職員、保護者が安心して施設で過ごすために重要な措置です。法律上の設置義務はありませんが、一般財団法人日本救急医療財団の「AEDの適正配置に関するガイドライン」では、万が一の事態に備えてAEDを設置することが望ましいとされています。

AEDの導入や、緊急時を想定した救命講習・訓練を実施して、万が一の際に迅速に対応できる環境を整えておきましょう。

旭化成ゾールメディカルのAEDサイトでは、「AEDの使い方と心肺蘇生の流れ」が学べるコンテンツを多数ご用意しています。一次救命処置やAEDについての疑問にお答えしている「よくあるご質問」もぜひご活用ください。