2026年8月31日公開
工事・建設現場では、高所作業や重機の使用、屋外での作業などにより、労働災害や突発的な心停止が発生するリスクがあります。こうした背景から、従業員が安全に働ける環境を整えるためにAED設置を検討されている方もいるでしょう。
本記事では、工事・建設現場でAED設置が求められる理由や、現場環境に適したAEDの選び方、設置場所や管理体制のポイントを解説します。安全衛生管理の強化と、従業員の命を守る体制づくりを進める際の参考にしてください。
工事・建設現場にAED設置が求められる理由

工事・建設現場では、一般的なオフィスとは異なる危険が伴います。そのため、万が一の心停止に備えたAEDの設置は、安全管理体制を整える上で重要な取り組みの一つです。
ここでは、工事・建設現場にAED設置が求められる4つの理由を解説します。
労働災害など予期せぬ心停止リスクへの備え
建設業は、全産業の中でも死亡災害が多い業種です。厚生労働省の労働災害統計では、建設業の死亡者数は全産業の約30%台を占める年が続いています。
高所作業や重量物の運搬に加え、夏場には熱中症のリスクもあります。このような過酷な作業環境では、外傷だけではなく突発的な心停止が発生する可能性も否定できません。
心停止では、除細動が1分遅れるごとに救命率が大きく低下するといわれています。現場によっては救急車の到着まで時間を要する場合もあるため、AEDを現場に設置し、迅速に使用できる体制を整えることが従業員の命を守ることにつながります。
参照:厚生労働省「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」
厚生労働省「令和7年 労働災害発生状況について」
企業が果たすべき「安全配慮義務」の遂行

企業には、従業員が安全かつ健康に働ける環境を整える「安全配慮義務」があります。これは労働契約法第5条に定められた義務であり、安全管理体制を適切に構築することを求める規定です。
安全配慮義務を怠り、その結果として従業員に損害が生じた場合は、損害賠償責任などを問われる可能性があります。過去には、安全管理や救護体制の構築が不十分であったことについて、企業や組織の過失が認められた事例もあります。
AEDの設置自体は法的義務ではありません。しかし、緊急時に迅速な救命処置を行うための合理的なリスク低減策として重要視されています。日頃からAEDを設置し、適切な救護体制を整備することは、安全配慮義務を果たすための取り組みの一つといえるでしょう。
参照:厚生労働省「労働契約法のあらまし」
労働力不足対策としての企業イメージ向上
建設業界では、若年層の定着率の低さや就業者の高齢化が進んでいます。そのため、人材の確保と定着は多くの企業に共通する課題です。
AEDの配備を含めた安全対策を充実させることは、従業員が安心して働ける環境づくりにつながります。安全への投資は、職場環境の改善や従業員の満足度向上にも寄与するでしょう。
また、安全管理に積極的に取り組む姿勢は、就職希望者や取引先からの信頼を得る要素にもなります。AEDの設置だけで企業評価が決まるわけではありませんが、安全対策全体を強化することで、企業イメージの向上や人材確保につながる可能性があります。
公共工事での評価向上と地域貢献
公共工事では、安全衛生に関する取り組みが評価対象となる場合があります。そのため、安全管理体制を充実させることは、評価の向上にもつながる取り組みです。
AEDの導入を含めた救命体制の整備は、安全への取り組みを示す一例として評価される場合があります。現場の安全管理を強化するとともに、万が一の事態に備えた体制づくりを進めることが重要です。
さらに、現場近隣で不測の事態が発生した際には、設置しているAEDを活用して救命活動を支援できる可能性があります。工事では騒音などにより地域へ負担をかけることもあるため、AEDの設置は地域社会への貢献や信頼関係の構築にも役立つでしょう。
工事・建設現場に適したAEDの選び方

ここでは、導入後の運用も見据えながら、工事・建設現場で確認したい4つのポイントを紹介します。
騒音環境でも分かりやすい音声・液晶表示機能
工事現場では、重機や作業音の影響によりAEDの音声ガイダンスが聞き取りにくくなる場合があります。そのため、音声案内だけではなく、視覚的に操作手順を確認できる機能を備えたAEDを選ぶことが大切です。
イラストやアニメーションなどで操作手順を確認できる機種であれば、初めて使用する人でも状況を把握しやすくなります。緊急時は冷静な判断が難しくなるため、音声と視覚の両方で操作をサポートする機能が役立つでしょう。
例えば旭化成ゾールメディカルのZOLL AED Plusには、液晶画面に加えイラストを用いて操作手順を案内する機能が搭載されています。工事・建設現場での使用を想定する際は、このような視覚的なサポート機能にも注目するとよいでしょう。
参考:旭化成ゾールメディカル「ZOLL AED Plus製品情報」
過酷な環境に耐える防じん・防水・耐振動性能
工事・建設現場では、屋外作業や粉じん、重機による振動など、精密機器にとって厳しい環境となる場合があります。そのため、耐久性を考慮した機種選びが欠かせません。
故障や誤作動のリスクを抑えるため、防じん・防水性能を備えたAEDを選びましょう。また、重機による振動の影響を受ける可能性がある現場では、耐振動基準を満たした堅固な機種が適しています。
現場環境に適した耐久性能を備えたAEDであれば、長期間にわたり安心して運用することができます。
ランニングコストとバッテリーの交換サイクル
AEDは導入して終わりではありません。継続して使用できる状態を維持するためには、定期的な点検や消耗品の交換が必要です。
電極パッドやバッテリーには使用期限があり、一定期間ごとに交換する必要があります。そのため、本体価格だけではなく、消耗品の価格や交換サイクルも確認した上で機種を比較しましょう。
長期的な維持管理費まで含めて検討することで、導入後の負担を把握しやすくなります。初期費用だけではなく、トータルコストの視点で比較することが大切です。
未就学児用モード(小児用モード)の必要性
一般的な工事・建設現場では、未就学児が立ち入る機会は多くありません。そのため、未就学児モード(小児用モード)の優先度は設置環境によって異なります。
一方で、地域住民への貸し出しや地域貢献も視野に入れる場合は、未就学児用モード(小児用モード)を備えたAEDも選択肢となります。周辺で救命活動が必要となった際に対応できるAEDの幅を広げられるためです。
導入する際は、現場だけではなく利用目的や設置環境も踏まえ、必要な機能を整理した上で機種を選びましょう。
工事・建設現場におけるAED設置場所のポイント
AEDは設置するだけでは十分ではありません。心停止が発生した際にすぐ使用できる場所へ配置することが、救命率の向上につながります。
ここでは、工事・建設現場でAEDの設置場所を決める際に押さえたい3つのポイントを紹介します。
現場から片道1分以内でアクセスできる動線の確保
AEDは、現場から片道1分以内で取りに行ける場所へ設置することが推奨されています。心停止では初期対応の速さが救命率を左右するため、AEDを取りに行く時間をできる限り短縮することが重要です。
設置場所としては、現場事務所や休憩所など、人が集まりやすく誰でも取り出しやすい場所が適しています。広い現場では、作業エリアごとの複数台設置や巡回車両への搭載も検討するとよいでしょう。
現場のレイアウトや作業範囲は変化する場合があります。作業内容に応じて配置を見直し、迅速に持ち出せる動線を維持してください。

参照:一般財団法人日本救急医療財団「AED の適正配置に関するガイドライン」
参考:旭化成ゾールメディカル「AEDの適正配置をご存知ですか?効果的・効率的なAED設置とは」
保管に適した温度・湿度環境の維持
AEDは高度管理医療機器であるため、適切な環境で保管することが重要です。設置場所だけではなく、温度や湿度にも配慮する必要があります。
メーカーが定める保管温度・湿度を守り、直射日光や高温・低温、水ぬれを避けて管理してください。寒冷地や未暖房エリアでは、保温機能付きキャビネットの利用が有効です。
また、屋外や粉じんが多い場所では、防じん・防滴仕様の収納ボックスを活用することでAEDを保護できます。現場環境に合わせた保管方法を選び、AEDを正常に使用できる状態で維持しましょう。
誰でもすぐに見つけられる標識・表示

遠くからでも視認できるよう、国際的に認知されている「心臓と稲妻」のAEDマークを適切な高さへ掲示しましょう。また、夜間作業や停電時に備え、蓄光式の表示や非常灯の近くへ設置することも有効です。
さらに、動線に沿って案内矢印を複数設置すれば、初めて現場を訪れた人でもAEDの場所を把握しやすくなります。標識だけではなく、実際の動線や視認性まで考慮した表示計画を心掛けてください。
AEDを確実に運用するための管理・教育体制
AEDを設置した後は、緊急時に確実に使用できるよう、日常点検と教育体制を継続することが重要です。
メーカーの案内に従って定期的に点検を実施し、正常な状態を維持してください。ステータスインジケーターの表示や電極パッド・バッテリーの状態、有効期限などを確認することで、いざというときの故障やトラブルを防げます。点検担当者や点検スケジュールを決め、継続的に管理することも大切です。
また、AEDは音声案内に従って操作できますが、救命講習や社内訓練を実施しておけば、緊急時にも落ち着いて対応しやすくなるでしょう。定期的な訓練は、操作手順の確認だけではなく、心理的な負担の軽減にもつながります。
参照:厚生労働省「AEDを点検しましょう!」
まとめ
工事・建設現場では、労働災害や突発的な心停止などの緊急事態に備え、安全管理体制を整えることが重要です。AEDを導入する際は、防じん・防水性能や視覚的な操作案内など、現場環境に適した機能を備えた機種を選びましょう。
また、設置後は現場から片道1分以内でアクセスできる場所へ配置し、日常点検や救命講習・訓練を継続することで、AEDを確実に活用できる体制づくりにつながります。
旭化成ゾールメディカルでは、工事・建設現場をはじめとしたさまざまな設置環境に対応したAEDをご提案しています。導入方法や機種選び、購入・リースについてご不明な点がありましたら、お気軽に
お問い合わせください。現場環境に合わせたAED選びをサポートいたします。


