2026年4月13日公開

※本記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、診断・治療を目的としたものではありません。症状が重い場合や不安がある場合は、必ず医療機関に相談してください。

気温の高い時期になると、熱中症の危険性が増加してきます。熱中症は暑さによって引き起こされる体調不良の総称で、悪化すると意識を失ったり、命を落としたりする恐れがある危険な症状です。熱中症で意識のない人に対してはAEDを使用した救命処理が必要になる場合があります。誰でも熱中症で倒れるリスクがあるため、万が一の際には、慌てず適切な処置ができるよう、症状やAEDの使用方法をきちんと学んでおくことが重要です。本記事では、熱中症の疑いがある人に対する救急対応やAED使用について紹介します。

熱中症とは? 症状の目安

熱中症とは、高い気温や湿度、強い日差しなどの暑さによって起こる体調不良の総称です。
めまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気、体のだるさなど、比較的軽い症状から始まることもありますが、悪化すると、けいれんや意識障害を起こし、命に関わることもあります。
熱中症が疑われるときは、症状の強さを大まかに見ながら、早めに対応することが大切です。

汗を拭う男性

軽い症状の例

  • めまい、立ちくらみ
  • 気分が悪い、ぼーっとする
  • 大量の汗をかく
  • 足がつる、こむら返りがある

注意が必要な症状の例

  • 頭痛
  • 吐き気、嘔吐
  • 強いだるさ、疲労感
  • 集中しにくい、判断力が低下している

すぐに救急要請を考える症状の例

  • 呼びかけへの反応が鈍い
  • 意識がはっきりしない
  • けいれんがある
  • まっすぐ歩けない
  • 自力で水分をとれない

特に、意識がはっきりしない場合や、水分補給ができない場合、けいれんがある場合は重症化のおそれがあります。ためらわずに救急車を要請してください。

※日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」では、従来の重症度分類が見直され、最重症群として「Ⅳ度」が導入されていますが、本記事では一般の方にわかりやすいよう、症状ごとの目安で整理しています。
参照:厚生労働省「熱中症予防のための情報・資料サイト」
参照:日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」

熱中症が疑われるときの救急対応

ここからは、熱中症が疑われる場合に必要な対応を解説します。暑熱による諸症状は対処のタイミングや方法、傷病者側の条件により刻々と変化します。早期に異常を認識し早期の治療につなげて重症化を防ぐことが重要です。

救急車

意識と呼吸を確認し、必要に応じて救急要請とAEDを手配する

初めに熱中症が疑われる相手の意識があるかを確認しましょう。意識の有無によって、必要な対応が変わります。

  • 意識がある:涼しい場所に避難させ、症状に応じて医療機関を受診する
  • 意識がない:すぐに救急車を要請する
熱中症が重篤化すると意識障害や循環器不全を伴い、生命に関わる状態に至ることがあります。たとえ対応開始時に具合の悪そうな方の意識があっても、状況によっては急に意識を失う可能性があります。そのため、救急要請と同時にAEDも要請しておくことが重要です。重症の熱中症では心停止に至る場合もあり、AEDによる対応で救命につながる可能性があります。

衣服をゆるめて体を冷やす

意識の有無を確認できたら、安全を確認し、可能な範囲で体を冷やしましょう。熱中症への対応では、いかに早く体温を下げられるかが重要です。可能な範囲で衣服を脱がせ、体から熱を逃がす方法をとるのが良いです。いきなり脱がすのが難しい場合は、衣服を緩めて放熱を促すだけでもかまいません。

衣服の処置を行ったら、肌が露出したところを水でぬらしたハンカチなどで拭いたり、ぬらしたタオルをのせたり、冷たいペットボトルや保冷剤を当てたりします。首や脇の下、太腿の付け根など、大きな血管のある場所を重点的に冷やしましょう。手の平や頬、足の裏など血流が多い部分を冷やすのも効果的です。水や氷が近くにない場合は、うちわで扇いだり、扇風機で風を送ったりして体の熱を逃がすようにしましょう。

【意識がある場合】水分・塩分を補給する

熱中症が疑われる人に意識がある場合には、水分と塩分を補給させましょう。水分・塩分を補給するのに推奨される飲み物・食べ物は、以下の通りです。

  • 経口補水液
  • スポーツドリンク
  • 塩分入りタブレット
  • ゼリー飲料
  • 塩昆布
  • 梅干し など

熱中症の予防には水分補給が大切といわれますが、水分だけを補給していると、血中の塩分濃度が下がって手足の筋肉を収縮させるため、かえって熱けいれんの症状を引き起こしかねません。多くの汗をかくと、体から水分はもちろん、塩分も失われます。熱中症対策では、水分と塩分を一緒に補給することが大切です。

ただし、意識がない人に無理矢理飲み物を飲ませたり、食べ物を与えたりするのは危険です。
意識があっても反応が鈍い場合や、呼びかけに答えられない場合は、無理に飲ませず、ためらわず救急車を要請してください。

【意識がない場合】心拍・呼吸を確認してAEDを準備する

傷病者に意識がなく、正常な呼吸が確認できない場合は、一次救命処置を行います。一次救命処置とは、傷病者が発生した場合に救急隊が到着するまで現場にいる人が実施する応急処置です。傷病者に正常な呼吸がない、または判断に迷う場合は、胸骨圧迫を始め、AEDを準備してください。

AED使用の有無を判断するのが難しいと感じる人もいるでしょう。使用すべきかどうか迷った場合には、傷病者に電極パッドを装着すると、AEDが電気ショックを行うべきかを自動で判断してくれます。

AEDは体がぬれていると心臓に十分な電流が届かない恐れがあります。放熱するために体をぬらしたり冷やしたりしていて、傷病者の体がぬれている場合は、しっかりと水分を拭き取ってからAEDを使用してください。一次救命処置は、救急隊が到着するまで続けましょう。

心肺蘇生の流れとAEDの使用方法については、以下の記事も併せてご覧ください。
参考:旭化成ゾールメディカルAEDの使い方と心肺蘇生の流れ

【症状別】熱中症の効果的な対処法

熱中症には、以下のように典型的な4種類の症状があり、それぞれの効果的な処置が存在します。
本記事では、一般的な理解のために従来用いられてきた「熱失神・熱けいれん・熱疲労・熱射病」の4分類で説明します(日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2024」でも重症度分類が整理されています)。

  • 熱失神
  • 熱けいれん
  • 熱疲労
  • 熱射病
それぞれの特徴と対処法を紹介します。

熱失神

熱中症で立ちくらみや失神を起こす症状を「熱失神」といいます。熱失神の原因は、熱中症による一時的な血圧の低下です。気温の高い中で、じっとしたままの状態だと、血管が開いていき、重力の影響で血液が足の方へと流れてたまっていきます。結果、全身の血圧が下がって起きるのが熱失神です。

熱失神が疑われる場合は、すぐに涼しい場所に移動させます。傷病者を仰向けに寝かせ、足を高くしてください。足を高い位置に持っていくと、血液が頭の方へ戻るのを促せます。体を冷やすとともに、意識がある場合は、冷たい飲み物などを用意して水分を補給させてください。症状が続く場合や改善しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。

熱けいれん

熱けいれんは、熱中症により足などの筋肉がつる症状です。運動中に急に足がつって動けなくなったり、こむら返りを起こしたりする場合、熱けいれんが疑われます。主な原因は、運動による疲労や大量の発汗に伴う水分・塩分不足です。体から水分や塩分が失われると、血中の塩分濃度が下がり、手足の筋肉が収縮して熱けいれんを引き起こします。

熱けいれんが疑われる場合は、まずは体を冷やし、筋肉のストレッチを行ってください。また電解質の補給も重要です。熱けいれんは、水分不足だけではなく塩分不足も原因なので、塩分も忘れず補給しましょう。症状が続く場合や改善しない場合は、速やかに医療機関を受診してください。

熱疲労

熱疲労は、大量の汗をかいたことによって体内の水分・塩分が不足し、頭痛、めまい、倦怠感などが生じる症状です。意識は保たれているものの、判断力や集中力は低下しています。軽く考えて放置する と、体温調節がうまくできなくなり、意識障害などの重篤な症状につながる危険があります。
また、熱疲労は夏に発生しやすいものの、季節を問わず起こり得ます。特に春や秋は気温・湿度・日差しの変化に油断しやすいため、暑い日や湿度が高い日には注意が必要です。
熱疲労が疑われる場合は、涼しい場所へ移動して休ませ、体を冷やしながら水分・塩分を補給しましょう。
意識がぼんやりしている、水分がうまく取れない、症状が改善しない場合には、速やかに医療機関を受診してください。

熱射病

熱射病は、体が本来持っている上昇した体温を下げようとする調節機能がうまく働かなくなり、体の深部体温が上がり続けてしまう症状です。深部体温とは、体の中心部、特に脳や内臓の温度を指します。深部体温をうまく外部に放出できなくなる熱射病は、危険な状態で、場合により入院や集中治療が必要になります。
深部体温が著しく上昇した状態が続くと、細胞が障害を受け、命に関わるおそれがあります。
助かっても後遺症が残る可能性があります。

熱射病が疑われる場合は、できるだけ早く深部体温を下げることが重要です。涼しい場所に移動させたり、タオルで体を拭いたりするだけではなく、全身を氷水に浸す、手足を氷水に入れる、氷水で冷やしたタオルを全身に巻くなど可能な範囲で積極的に冷却を行いましょう。意識がはっきりしない、呼びかけへの反応が鈍い、けいれんがある、自力で水分をとれない場合は、ためらわず救急車を要請してください。

まとめ

熱中症は暑熱による体調不良で、特に気温が高くなる時期に発生しやすく、重症化すれば意識障害を伴い、命の危険につながることもあります。まずは熱中症を防ぐことが大切ですが、万が一重い症状が現れた場合には、早急に対応を取りましょう。

熱中症の対処法では、初めに体を冷やしたり、水分・塩分を補給したりするのが大切です。意識がない場合は、さらにAEDを使用する必要性が出てきます。AEDは胸骨圧迫とともに、救急隊が到着するまでの一次救命処置の中でとても重要な役割を果たします。熱中症を起こした人のいる現場に居合わせた場合は、冷静かつ適切にAEDを使用しましょう。

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