2024年2月2日

AEDの使用は、すべての心停止傷病者に有効です。ただし、電気ショックはすべての心停止傷病者に有効ではなく、電気ショックの適応・適応外は、AEDが心電図の波形を調べ、解析を行った結果に基づき自動で判断します。

ここでは、AEDの役割やAEDの電気ショックが適応になる場合、適応外になる場合などについて解説します。いざ救命処置を行う際に落ち着いて行動できるように、AEDと一次救命処置について基本的な知識を身につけておきましょう。

参考:旭化成ゾールメディカル「AEDは必ず電気ショックをする?AEDの正しい知識を身につけよう

AED(自動体外式除細動器)とは

AED(自動体外式除細動器)とは

AED(自動体外式除細動器)は、心停止状態にある人に対して使用される救命医療機器です。心臓がけいれんし血液を送り出すポンプ機能を失った心停止状態(心室細動)の傷病者の胸部に電気ショックを与え、心臓の機能を回復させることを目的としています。

以前は医師など限られた人しか使用できませんでしたが、2004年7月の規制緩和により一般の人々でも使えるようになりました。AEDは学校や空港、駅、各種施設などの公共の場所や、オフィスビル、運動場、集合住宅など人が多く集まる場所や心停止リスクが高まる場所を中心に広く設置されており、緊急時に誰でも利用できるようになっています。

AEDは音声ガイダンスや表示画面を通じて、使用者に対して具体的な指示を出します。そのため、救命処置の経験がない人でも、正しい手順で処置を行うことが可能です。

心停止とは

心停止とは、文字通り心臓の機能が停止してしまった状態を指します。心臓が体中に血液を送れなくなるため、心停止が起こると10秒程度で意識を失い倒れます。そのままの状態が続くと脳の機能に障害が発生し、回復は困難になります。
呼吸が停止(またはふだん通りの呼吸をしていない)、大声で呼びかけたり体を揺すったりなどしても反応しません。突然倒れてしまった人がこのような状態になっている場合は、心停止している可能性が高いといえます。

参考:旭化成ゾールメディカル「心停止とは?AEDの使用が必要な症状について



AEDの役割

AEDの主な役割は、心臓に電気ショックを与えて心臓の活動を正常なリズムに戻すことです。
心停止が発生した場合、生存率は時間の経過とともに急速に低下します。AEDを迅速に使用できるかどうかで、心停止した人の生存率は大きく左右されます。

そのため、人々がAEDを素早く見つけて使用できるように、AEDは各種施設の目立つ場所に配置されていたり、設置場所の案内が掲示されています。自分の生活圏内や職場などにおいて、どこにAEDが設置されているか、日頃から意識して確認しておくと、いざという時に素早く行動できるでしょう。

参考:旭化成ゾールメディカル「AEDとは
              「AEDはどこにある?知っておきたい設置場所や設置基準のポイント

AEDの電気ショックが適応になる場合

AEDは誰に対しても使用できますが、電気ショックが適応になる(電気ショックが必要)かどうかは別の問題です。まず、倒れた人の胸にAEDのパッドを貼り付けて心電図の解析に進みましょう。AEDが心電図波形に応じて電気ショックの適応・適応外(要否)を自動で判断します。救助者自身が電気ショックの要否を判断する必要はありませんので、AEDの指示に従って救命処置を行いましょう。

AEDの電気ショックが適応になる心停止は、「心室細動」「心室頻拍(無脈性心室頻拍)」の2つです。AEDが電気ショックの適応外であると判断した場合、AEDは電気ショックを行わないように設計されています。
AEDが適応外と判断した状態でショックボタンを押しても作動しないため、使用者が誤って電気ショックを与えることはありません。

参考:旭化成ゾールメディカル「心臓突然死の主な原因のひとつである不整脈、「心室細動」とは?

AEDの電気ショックが適応外になる場合

AED(自動体外式除細動器)とは

AEDは電気ショックを行うだけでなく、救命処置の手順も音声ガイダンスやディスプレイ表示で説明してくれるため、AEDを使用すること自体が救命につながります。心臓の状態によっては、電気ショックの適応外(電気ショック非適応、電気ショック不要)になります。

電気ショックが適応外になるケースは、「心静止」「無脈性電気活動(むみゃくせいでんきかつどう)」の2つです。心静止は、心臓がけいれんすらしていない状態なので、電気ショックを与えても効果はないため適応外となります。

無脈性電気活動は、心電図上には何らかの電気活動が見られるものの、実際には心臓が効果的に機能しておらず脈が触れない状態です。AEDの電気ショックは、特定のリズムの心停止に対して行うものであり、無脈性電気活動には効果がないため、こちらも適応外となります。

適応外の場合はAEDからショック不要のガイダンスが流れます。不要になった場合でも、救急隊の到着までは胸骨圧迫を続ける必要があります。AEDの指示に従って救命処置を継続しましょう。

AEDを使った救命処置が必要な状態とは

AEDは、「意識がある場合」「ふだん通りの呼吸をしている場合」「脈拍が確認できる場合」、すなわち心停止に至っていない場合には使用する必要がありません。しかし、心停止かどうかを判断するのは極めて難しいため、明らかに意識があるような場合を除き、まずAEDを使用しましょう。

また、救命には胸骨圧迫が非常に重要です。胸骨圧迫は心肺蘇生の一部として行われる救命処置で、胸部に直接圧力をかけて血流を作り脳や全身へ血液を送り出し、臓器が酸素不足になることを防ぐのを目的としています。AEDの電気ショックが適応外になった場合も、AEDのガイダンスに従って胸骨圧迫を必ず行いましょう。

AED(自動体外式除細動器)とは

AEDの適応年齢

AEDの使用における適応年齢は、基本的に制限がありません。JRC(日本蘇生協議会)ガイドライン2010対応機種以降、すべての年齢の人に使用できるようになっています。

ただし未就学児に対しては、除細動パッドの種類や貼り方が小学生~大人とは異なります。また、未就学児・小学生~大人兼用の除細動パッドが搭載されている機種もあるため、傷病者が未就学児の場合は、AEDのガイダンスやパッドのイラスト・説明文などを確認して指示に従いましょう。

参照:一般財団法人日本救急医療財団「救急蘇生法の指針2020(市民用)」

AED を知って"いざ"という時に備えよう

本記事では、AEDの電気ショックについて、「適応になるケース」「適応外になるケース」に分けて解説しました。

AEDには初めて救命処置をする人をサポートする機能が備わっています。電気ショックの必要性を判断するだけでなく、どのような対応をすべきかをすべて音声ガイダンスやディスプレイ表示で指示してくれます。

AEDが普及し、より多くの人が使用できるようになれば、突然の心停止からより多くの命を助けられます。いざというときのために、AEDと一次救命処置についての知識を身につけておきましょう。

旭化成ゾールメディカルのAEDサイトでは、「AEDの使い方と心肺蘇生の流れ」が学べるコンテンツを多数ご用意しています。一次救命処置やAEDについての疑問にお答えしている「よくあるご質問」もぜひご活用ください。