2022年7月7日

AEDとは、突然の心停止を起こした傷病者に対して電気ショックを与え、心臓を正常なリズムに戻すための医療機器です。街中にはAEDが設置されていますが、その設置場所は適当に決まっているわけではありません。厚生労働省が定めた設置場所の基準に基づいて設置されています。

ここでは、AEDの設置が推奨される主な施設や場所、設置基準について解説します。AEDが必要な場面に遭遇したときのために、AEDがどのような場所に設置されているかあらかじめ知っておくことが大切です。

厚生労働省が定めるAED設置場所の基準

厚生労働省が定めるAED設置場所の基準

現状、AEDの設置を義務づける法律はありませんが、厚生労働省が公表している「AEDの適正配置に関するガイドライン*」によると、AEDは以下のような基準で設置が考えられています。

「AED を効果的・効率的に活用するためには、人口密度が高い、心臓病を持つ高齢者が多い、運動やストレスなどに伴い一時的に心臓発作の危険が高いなど心停止の発生頻度に直接関わる要因だけでなく、 目撃されやすいこと、救助を得られやすい環境であることも考慮する必要がある。」

*参照:厚生労働省「AEDの適正配置に関するガイドライン



AEDは、心停止の傷病者に対して使われるものであるため、上述されているような条件下ではAEDを設置することが推奨されます。

心停止してから1分経過するごとに、救命率は7%から10%程度低下すると考えられています。一方で119番通報から救急車の到着まで、全国平均で8.9分*かかります。心停止から救急隊が来るまでの間何もしないでいると、傷病者の救命率は約10%にまで低下してしまいます。救命率を少しでも上げるために、多くのAED設置が求められています。

*参照:総務省消防庁「令和3年版 救急救助の現況

AED設置が求められている主な場所とその理由

厚生労働省の「AEDの主な設置施設等一覧*」によると、医療施設のほか、次のような施設へのAED設置が推奨されています。

*参照:厚生労働省「AEDの主な設置施設等一覧


駅・空港・長距離バスターミナル・高速道路サービスエリア

駅・空港・長距離バスターミナル・高速道路サービスエリア

駅や空港などは、不特定多数の人が密集しやすい場所です。都市部における鉄道では1日の平均乗降数が1万人を超えることもあるため、心停止の発生率やAEDの使用例も必然的に多くなります。したがって駅や空港にはAEDが設置されています。

旅客機や旅客船などの長距離輸送機関

長距離輸送機関とは旅客機・長距離列車・旅客船などのことを指します。なかでも旅客機や旅客船の中は、長旅や疲労が要因となって心臓発作が起こるリスクが高いと考えられています。

これらの輸送機関は孤立しており、救急隊の助けが得られにくい場所でもあるため、よりAEDの設置が有効です。

体育・スポーツ関連施設

体育・スポーツ関連施設

スポーツ関連施設は、運動強度の高いスポーツが行われることもあり、心室細動や心停止のリスクが比較的高い場所と考えられています。

室内だけではなく屋外のゴルフ場なども例外ではありません。そもそもゴルフを行う年齢層は他のスポーツよりも高いため、1施設あたりの心停止率が高い傾向があります。このような理由によりゴルフ場やスポーツジムでもAEDの設置が求められています。

大型商業・多数集客施設

大型商業・多数集客施設

近年多くなってきている大型商業施設や多数集客施設も、不特定多数の人が集まる場所です。大型商業施設においては、場所や地域によっては1日5,000人以上利用する施設もあり、そのような場所ではAEDを計画的に設置することが推奨されています。
また、多数集客施設とは、動物園や海水浴場、大規模入浴施設などのことを指し、これらの場所にも複数のAED設置が必要となります。

施設の規模は小さいですが、コンビニエンスストアは不特定多数の人が集まることに加え、24時間営業でアクセシビリティが高いことから設置が推奨されています。

公共・医療・福祉施設

公共・医療・福祉施設

公共施設も大型商業施設ほどの人数ではありませんが、常に不特定多数が訪れる場所です。また公共施設は、ほかの施設への見本や基準になるという役割もあるため、AED設置が進んでいるといえます。

福祉施設に至っては、高齢者が集まることが多いという理由から心停止の発生リスクは高いと考えられており、AEDの設置が推奨されています。

会社・事業所

会社・事業所

会社や事業所も不特定多数の人が集まる場所であり、年齢層も多岐にわたります。特に高齢者が多い会社や事業所では心停止や心臓発作のリスクが高まるため、AEDの設置が必要と考えられます。

学校

学校

学校は主に若年層の学生が集まる場所ですが、体育の授業や部活動などのスポーツの最中は、突然の心停止発症のリスクが高まります。また、学校行事や地域社会へ開放される夜間や週末などは不特定多数の人が集まることに加え、学校の周辺で傷病者が出たときにすぐAEDを使うことができるというメリットもあります。

このように、AED設置が推奨される場所は、多くの人が訪れるところや、高齢者が集まる場所などが中心となっています。これらに該当する場所にはすでにAEDが設置されていることが多いので、覚えておくといざという時にスムーズな行動が取れるでしょう。

自分の身の回りや生活圏のどこにAEDが設置されているか、日頃から確認しておくと役に立ちます。日本救急医療財団の「全国AEDマップ*」には、AED設置者が任意で登録したAEDの設置場所が地図上に表示されているので、調べてみるのもおすすめです。

*参照:日本救急医療財団「全国AEDマップ



また、企業や事業所、上述のような多くの人が集まる施設で、AEDが未設置であれば、安全配慮義務の観点からも、AED設置の検討が望ましいといえます。