2023年3月17日

AEDは医療機関をはじめ、学校、駅、公共施設、 商業施設、スポーツ施設、企業など、多くの人が集まるさまざまな場所に設置されています。AEDは一度設置すればそのまま永久に使用できるわけではありません。また、適切な管理が行われなければ緊急時に作動せず、救急救命の性能を発揮できないなどの重大な事象が発生するおそれがあります。そうした事象を防ぎ、AEDを安心・安全に使用するために、AEDの設置管理者に対して、AEDの日常点検や消耗品の管理の徹底、設置情報の登録・公開等の実施、AEDの更新が求められます。

ここでは、AED更新の必要性と、AEDの保証期間と耐用年数の違い、日常点検や消耗品の管理などについて解説します。あわせてAEDの管理における注意点も紹介していますので参考にしてください。

AEDに更新が必要な理由

AEDに更新が必要な理由

AEDとはAutomated External Defibrillatorの略語で、日本語の名称は自動体外式除細動器といいます。心臓は脳や全身に血液を巡らせるポンプ機能をつかさどる身体にとって重要な器官です。しかし、心室細動と呼ばれる不整脈が起こるとポンプ機能がうまく働かなくなり、死に至る場合があります。AEDは心臓のポンプ機能に異常が生じた場合に電気ショックを与えて心臓のリズムを正常に戻すための医療機器です。

医薬品、医療機器等の品質、有効性および安全性の確保等に関する薬事法(昭和35 年法律第145号)によってAEDは「高度管理医療機器」および「特定保守管理医療機器」と定義されています。AEDの医療機器としての品質や、有効性・安全性を担保維持するために、耐用期間を過ぎたAEDは速やかに更新する必要があります。

AEDの更新とは、新しいAEDに交換すること(買い替え・入れ替え)を指します。

参考:旭化成ゾールメディカル「AEDとは
              「心臓突然死の主な原因のひとつである不整脈、「心室細動」とは?

AEDの保証期間と耐用年数の違い

AEDの保証期間と耐用年数の違い

AEDの保証期間とは、メーカーが無償で修理や交換をしてくれる保証期間を指します。耐用年数とは、AEDを問題なく使用できる上限期間のことです。保証期間と耐用年数は、それぞれの意味や期間が異なります。ここでは保証期間と耐用年数の違いについて解説します。

保証期間とは

保証期間とは医療機器に限らず、さまざまな商品に用いられる用語です。保証期間は、顧客が購入した商品の機能について、製造販売業者が無償で修理・交換を受け付ける期間のことです。AEDの場合は、保証期間内かつ取扱説明書などに記載されている動作保証条件でAEDに不具合が発生した際に、購入者(設置管理者)は通常追加費用なしで修理・交換サービスを受けられます。ただし、例外事項もあるため、保証事項や保証規定を確認しておきましょう。

無償の修理・交換サービスを受けられる保証期間と、機器が使用に耐える期間を表す耐用年数では、用語の意味と定義に明確な違いがあります。AEDの場合は保証期間についても、耐用年数と同じく各製造販売業者が設定していることが一般的です。AEDの保証期間は、保証書、添付文書に記載されています。製造販売業者のWebサイトに掲載されている場合もありますので、不明な場合は必ず確認しておきましょう。

耐用期間(耐用年数)とは

AEDに限らず機器の使用可能な期間を一般的に「耐用年数」と呼ぶことが多く、AEDについても耐用年数と呼ばれることが多いですが、正式には薬機法で「耐用期間」という用語で示されています。そのため、ここからは耐用期間として解説していきます。

AEDを含む医療機器の耐用期間とは、機器の品質や安全性、有効性を維持可能な期間のことです。AEDの耐用期間は機種やメーカーによって異なります。使用環境や単位時間内の稼働時間、使用回数などを考慮して、耐久性に関するデータから各製造販売業者が設定しています。

AEDの耐用期間は、添付文書に記載されています。製造販売業者のWebサイトに掲載されている場合もありますので、不明な場合は必ず確認しておきましょう。

法定耐用年数について

AEDには耐用期間の他に、法定耐用年数というものがあります。法定耐用年数とは、税法で規定される耐用年数、つまり減価償却の期間のことです。法定耐用年数は経理や会計などの分野で用いるため、通常使用する上で意識する必要はありません。

AEDの法定耐用年数は4年とされていますが、実用上の耐用期間とは異なるため、法定耐用年数の4年を過ぎたからといってAEDを交換する必要はありません。設置しているAEDについては、交換が必要となる期間(保証期間・耐用期間)をあらかじめ保証書、添付文書などで確認しておくことが重要です。

AEDの日常点検と消耗品の管理

AEDの日常点検と消耗品の管理

AEDは救命処置のための医療機器です。AEDを設置したら担当者を配置し、いつでも使用できるように日頃から日常点検や消耗品の管理が必要です。ここではAEDの設置管理者が知っておくべき日常点検、消耗品の管理方法やポイントについて解説します。

ステータスインジケーターの確認

日常点検とは、AEDが正常に作動する状態かどうかを確認する作業です。

AEDの日常点検では、ステータスインジケーターの確認をすることが重要です。AEDには、AEDが使用できる状態にあるかを自動でチェックするセルフテスト機能がついています。セルフテストの結果はインジケーターに表示されます。インジケーターの形状は、ランプや画面などメーカーや機種によって仕様が異なります。

目視でインジケーターの表示が正常(使用可能)であるかどうか毎日確認してください。AEDには、日常点検のためのチェックリストが付属されています。

日常点検の結果をチェックリストに記録しておきましょう。異常が見つかった場合は、速やかに製造販売業者に問い合わせることが必要です。

参考:旭化成ゾールメディカル「AEDの日常点検・管理について

消耗品の管理

消耗品の管理には、期限管理と期限が過ぎた場合の速やかな交換が含まれます。AEDには電極パッドやバッテリーといった、消耗品となる部品が付属しています。特に電極パッドは1回しか使用できないため、使用後は速やかに交換しなければなりません。また、消耗品の使用期限はメーカーや機種によって異なりますので注意が必要です。

期限管理のためのタグがAEDに付属されています。AEDを設置した際や消耗品を交換した際は、必ずタグにパッドとバッテリーの使用期限を記入しましょう。

パッドやバッテリーなどの消耗品の使用期限はメーカーや機種によって異なりますが、AED本体の保証期間より短いケースが一般的です。その場合は保証期間内の交換が必要になるため、個別の期限管理や購入、交換作業を行います。AEDの設置や更新を予定している場合は、消耗品の使用期限、コスト、交換の手間なども考慮するとよいでしょう。

参考:旭化成ゾールメディカル「AEDの日常点検・管理について

AEDの管理についてその他の注意点

AEDの管理についてその他の注意点

AEDの管理についてのその他注意点は、設置者情報の登録を行うこと、廃棄や譲渡の際に連絡が必須なこと、製造販売業者からのお知らせに注意することです。それぞれ解説します。

AEDの設置者情報の登録を行う

設置者情報の登録には、以下の2種類があります。AEDを設置したらいずれも速やかに登録を行うことが大切です。

  • 製造販売業者への登録
     AEDに重大な不具合が発見され回収等がされる場合や、消耗品やAED本体の期限の通知など、製造販売業者から迅速かつ確実に情報が得られるよう、AED設置管理者はAEDを設置したら速やかに設置者情報を登録することが重要です。設置者情報の登録用紙は、通常AEDに同梱されているか納品時に提供されますので必ず確認しましょう。


  • 一般財団法人日本救急医療財団「AEDマップ」への登録
     厚生労働省は、一般財団法人日本救急医療財団を通じて全国のAED設置情報を分かりやすく公開し、AEDの積極的な活用を推奨しています。
    AEDの設置場所の情報を広く共有し、いざという時の救命の効果を高めるため、「財団全国AEDマップ」へのAEDの設置情報の登録を行ってください。

    「財団全国AEDマップ」は、突然心停止になった人を救うために、AEDが使用される機会を増やして救命率を向上させることを目的としています。設置しているAEDをマップに登録することで設置情報が分かりやすく公開されるため、いざというときの救命効果を高めることができます。

参照:厚生労働省「AEDを点検しましょう!)」
   一般財団法人日本救急医療財団「財団全国AEDマップ」
                 「財団全国AEDマップ登録のご案内」



廃棄や譲渡する際は連絡が必須

AEDを廃棄・譲渡する際は、AEDの購入店または製造販売業者への連絡が必須です。AEDは前述のとおり、法的に「高度管理医療機器」や「特定保守管理医療機器」として定められており、製造販売業者が設置場所を登録・管理しなければなりません。

また、AEDの設置場所を変更する場合や、設置管理者の担当を変更する場合にもAEDの購入店または製造販売業者への連絡が必要です。

製造・販売会社からのお知らせに注意する

AEDの管理に関して製造・販売会社からのお知らせに注意することが重要です。製造販売業者によっては、AEDの消耗品や本体の有効期限が近づくと、郵便やメール、電話などで通知を行う場合があります。通知が届いたら消耗品や本体の期限を確認し、適切なタイミングで交換や更新を行いましょう。

AEDの設置や更新を予定している場合は、こうしたサポートの有無や内容を確認するのもよいでしょう。

AEDの日常点検・更新で緊急時に備えよう

AEDは一度設置するだけでよいのではなく、点検や期限管理をする必要があります。耐用期間内であっても、万が一の際にAEDをきちんと動作させるために、AEDの日常点検や消耗品の管理を欠かさないことが重要です。AEDの日常点検、管理、更新を正しく行うことで、緊急時に問題なく使用できる状態を維持しましょう。