5人の十代のヒーローたちが、突然の心停止から命を救う

胸骨圧迫は心停止時に命を救う重要な処置です。心停止状態になったとき、ただちに適切な胸骨圧迫を行えば、心停止から10分後であっても生存率を60%に保つことが可能です。

とはいえ、心停止状態は突然起こるため、その場に居合わせた人たちにとって、人の命を救うことは初めての経験であり、不安に感じることも少なくないでしょう。そんな救命者を適切にサポートし、救命率の向上に貢献するのがAEDの役割と考え、ZOLLのAEDは世界で初めて開発した「胸骨圧迫ヘルプ機能」を備えています。

ここでは、意識を失って倒れたロン・スー・キートさんを助けた若者たちがZOLL AED Plusを使用して胸骨圧迫を行った事例を紹介します。

突然の心停止が起こるまで

9月のある日の午後、ロン・スー・キートが同窓生のサッカー試合に出るために友人たちと合流したとき、自分の命が5人の十代の若者によって救われようとは夢にも思っていなかった。49歳の不動産業者である彼は、少なくとも週に1回はサッカーを楽しんでいたが、心臓に問題があることを示す症状や兆候を経験したことはそれまで一度もなかった。

突然の心停止が起こるまで

この運命的な日、彼はマレーシア、ペナンのジョージタウンにあるチョンリン高校のグラウンドから出ようとしていたとき、突然意識を失って倒れた。

14歳の若者のアンスリー・タン・ゾンは人が倒れていることに最初に気づき、直ちに友達に助けを求めた。応急処置と救急医療を教え提供する組織、聖ジョン救急機構のボランティアである十代の若者たちは、すぐさま救命活動を開始した。 アンスリーは「私は少し慌てていました」と、うろたえたことは認めつつ、「落ち着いて状況を見究めようと自分に言い聞かせました」と述べた。

さらに、16歳のガブリエル・ソーン・チャイ・ロンは、「倒れた人がいる場所に駆けつけると、呼吸は止まっていて脈もありませんでした。それで、突然の心停止が起こったことを知りました」と語っている。

チームワークで救われた命

現場にい合わせた人に、学校のグラウンドに設置されていたZOLL®の自動体外式除細動器(AED)を持ってくるよう頼んだ後、若者たちは訓練どおり、スー・キート に胸骨圧迫(CPR)を施すとともにAEDを装着した。「私たちはAEDのガイダンスに従いました」と16歳のリオン・ジュン・ヨンは言う。AEDはスー・キートの心拍リズムを分析した後、除細動のため電気ショックを与えるようアドバイスしたので、若者たちはこれに従ってショックを与え、胸骨圧迫を実施し続けた。

混乱のさ中ではあったが、若者たちはAEDの音声ガイドに従って救命処置に着実に取り組み、交替で胸骨圧迫を続けた。ガブリエルはこのときの状況を振り返り、「AEDの音声ガイドは"もっと強く押してください"と私に言い続けました。倒れた人の体は私よりも大きかったので、私は力の限り押しました」と語る。

こうした若者たちの迅速な行動と、ZOLL AED Plus® のお陰でスー・キート は意識を回復し、脈拍は正常に戻っていき、その後彼はペナン中央病院に搬送された。

意識が戻ったとき、彼は何が起こったのかをまったく思い出せなかった。 「チョンリン高校のグラウンドでサッカーを楽しんでいたこと-それが、意識を失うまでの唯一の記憶です」と彼は言う。意識を回復したとき傍らにいた彼の妻は、彼が以前突然の心停止(SCA)を発症したことがあると説明した。「そのときは何か深刻なことが起こったぐらいにしか思いませんでした」。

病院での2週間の回復過程で、彼は5人の勇敢な十代の若者たちが自分の命を救ってくれたことを知った。 数週間後、彼は胸骨圧迫とAEDのトレーニングイベントでこの若者たちと会うことができたが、そこで彼は"この若者たちが生き延びるチャンスを自分に与えてくれたこと"に対する感謝の意を述べた。

救護活動を行ったその後

胸骨圧迫トレーニングの重要性

スー・キートの回復過程で彼を治療した医師ルア・リーン・ワーは、SCAの発症者の生存率がマレーシアでは1%未満であることから、彼は大変運が良かったと語った。また、SCA発症後の最初の4分間に胸骨圧迫を実施することが脳へのダメージを防ぐ意味できわめて重要であり、発症後10分以内に胸骨圧迫を行わなければ死に至る可能性があると彼女は指摘している。

こうしたことから、スー・キートは人々に、胸骨圧迫の方法とAEDの使用法を学ぶよう勧め、「みんながAEDの使用法と胸骨圧迫の方法を知っていれば、多くの生命を救うことができるでしょう」と語っている。

また彼は、「私の救命に携わったすべての人々にお礼を申し上げたいです。また、私が生還できるようすべてを最適な状態に整え、支えてくれた神に感謝します」と述べている。

彼の命を助けた英雄的な若者たちにとって、この救命活動は至極当然のことだった。14歳のシャーマン・サレッシュは、「この人の命を救うために、私たちは最善の努力を払っただけです」と話した。